N°53宇宙調理に関して:宇宙調理理論 ロードマップ①-③-N°2ついて。

伊藤のヨタばなし

ロードマップを一つずつ。ser.

------------
前回の続きです。
ロードマップ①-③における次の具体的な考察を深めるために、
以下の3つの点についてさらに掘り下げていきます。

1.液体挙動の詳細な実験事例や技術適用性
2.対流・伝導問題を解決する調理器具の設計案
3.月面用特化型調理技術のアイディア創出

----------
①-③-⑴:液体挙動の詳細な実験事例や技術適用性
A:「いくつかの月面環境下に近いプロセスで行った実験事例」と
それらに基づく、
B:「月面環境下の調理プロセスにて技術適用性が認められる技術」を
3つ程ずつ上げていく。

----
①-③-⑴:液体挙動の詳細な実験事例や技術適用性

A:月面環境下に近いプロセスで行った実験事例(3つ)

1.ISS(国際宇宙ステーション)における液体挙動実験
:宇宙空間の微小重力環境下で液体の表面張力や
 毛細管現象を観察するための実験が行われており
 水や油などの異なる液体の挙動が研究されています。
 これらのデータは低重力環境下での
 調理プロセスを考えるうえで有用です。

成果:液体が球状になる、
   容器の内部に偏るといった現象が確認された。
ーー
2.NASAの月重力模擬装置を使った流体力学実験
:月の1/6重力を模擬する装置を使い、
 液体の流れと対流を観察した実験があります。
 この実験では、熱対流が著しく抑制されることが確認された。

成果:液体の流動性が低下し、
   表面張力が主に挙動を支配することが判明した。
ーー
3.低重力環境での油脂の加熱実験
:油脂を微小重力下で加熱し、
 気泡の発生とその挙動を観察する実験が行われています。
 通常の揚げ物調理では、気泡が均一に上昇しますが、
 低重力下では気泡が液体内部に留まることが確認されました。

成果:揚げ物の調理プロセスでは、
   気泡排出が制御できないため、
   適切な熱伝達が難しいことが判明しました。
ーーー---
B:月面環境下の調理プロセスにて技術適用性が認められる技術(3つ)

1.毛細管力を利用した液体移送技術
:液体を重力に頼らずに移動させるため、
 容器内部に毛細管構造を設けて液体を指定位置に導く技術。
 これは、スープやソースなどを
 正確に流す調理プロセスに応用可能です。
--
2.表面張力を制御する容器設計
:表面張力を利用して液体を特定の形状に保持する容器
 (親水性と撥水性を使い分けた表面加工)を用いることで、
 液体の偏りを抑えることができます。
 ソースの保持や攪拌に役立ちます。
ーー
3.微振動を加えた液体の対流促進技術
:振動を加えることで液体内部の循環を促進し、
 熱伝達を均一にする技術です。
 これは煮込み料理やスープ調理時に効果を発揮します。

----------
①-③-⑵:対流・伝導問題を解決する調理器具の設計案
前々回、ロードマップ①-③で提示した
「ホットスポットへの解決策

:強制対流装置(ファンやポンプ)や均熱プレートの使用が必要。」
と、
「熱伝導の効率低下: 熱が伝わる速度が遅くなる可能性があり、
 加熱時間が長くなることが考えられる。
 調理器具には高伝導性の材料(例: 銅やアルミニウム合金)が適している。」に関して、

A:強制対流装置(ファンやポンプ)・均熱プレート・高伝導性の材料を調理器具に使用した場合
具体的にどのような形状と目的の調理器具が考えられるか?

B:熱の伝わる速度が遅くなる可能性というのは
 もう少し詳しく、地球上と比べてどの程度違うか?
----
①-③-⑵: 対流・伝導問題を解決する調理器具の設計案

A: 強制対流装置・均熱プレート・高伝導性材料を使用した具体的調理器具の例

1.強制対流オーブン
形状:小型の密閉型オーブンに内部ファンを内蔵し、
   熱風を強制的に循環させる設計。

目的:
 熱が均等に広がることで、
 パンやケーキなどの焼き上がりを均一にします。
 地球上のコンベクションオーブンに似ていますが、
 密閉性を高め、低重力環境での液体流動を防ぐ
ーー
2.均熱プレート付きフライパン
形状:底面に銅やアルミニウム合金製の
   均熱プレートを設けたフライパン。
   内部には電熱線と小型ポンプを内蔵し、
   内部循環液で均一に加熱する。

目的:
 表面全体を均等に加熱し、
 ホットスポットを解消します。
 揚げ物や炒め物に適している。
--
3. 密閉型スープ調理器
形状:内部に攪拌機構を備えた円筒形の密閉容器。
   圧力制御装置を付加し、熱対流を促進します。

目的:
 スープや煮込み料理を均一に加熱するための
 専用調理器具です。
ーーー---
B: 熱の伝わる速度が遅くなる可能性についての詳細

月面の低重力環境では、自然対流が著しく抑制される。
自然対流とは、液体や気体が加熱によって膨張し、
密度が低くなることで上昇し、
冷たい部分が下降することで生じる循環現象です。

地球上の場合:
 自然対流により、加熱された液体や空気は効率的に循環し、
 短時間で均一な温度分布を達成します。

月面環境の場合:
 自然対流がほぼ発生しないため、
 熱の伝わりは熱伝導のみに依存します。
 その結果、熱が伝わる速度は地球上に比べて
 30〜50%程度遅くなる可能性があります
(これはISSでの流体実験から得られたデータに基づく推定値)。

このため、調理においては、加熱時間が長くなる、
局所的な過加熱が起こるといった問題が生じます。

----------
①-③-⑶:月面用特化型調理技術のアイディア創出

月面環境と今の地球の技術を鑑みて、
月面用特化型調理技術のアイディアを5つほど示してみる。
----
①-③-⑶: 月面用特化型調理技術のアイディア(5つ)

1.密閉型真空フライ調理技術
月面の低圧環境を利用し、揚げ物を低温で調理する
真空フライ技術。
これにより油の飛散を防ぎ、調理効率を高めます。
ーー
2.磁気浮上式攪拌システム
容器の内部に磁気浮上機構を設け、
非接触で液体を攪拌する技術。
これにより均一な混合を可能にします。
ーー
3.自己加熱式食品パック
月面で簡易的に調理するため、
化学反応によって発熱する自己加熱式食品パックを開発。
水を加えるだけで調理可能です。
ーー
4.遠赤外線加熱技術
対流の代わりに遠赤外線を用いて
食品内部まで均一に加熱する調理器具。
パンや焼き物に適している。
ーー
5.月面ソーラークッカー
月面の強い太陽光を利用した集光型ソーラークッカー。
反射板と蓄熱材を組み合わせることで、
安定した加熱を実現します。

------------
以上が、各ステップに対する具体的な考察。
------------
次回は、ロードマップ①-③を更に先へ進めます。
------------

#公邸料理人 #伊藤のヨタばなし
#宇宙調理 #宇宙食 #universe #JAXA
#NASA #航空宇宙学会 
#テクノロジー #technology
#料理 #食思弁進化 #aRim #アリム
#調理理論 #cuisine #JSASS

コメント

タイトルとURLをコピーしました