ロードマップを一つずつ。ser.
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ロードマップ①-⑧
「国際的な協力と知識共有」
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いよいよロードマップ①の最終項目
「①-⑧:国際的な協力と知識共有」です。
これは、月面における宇宙調理の研究・開発・運用を
国家単位の枠を超えて
どのように連携・統合していくかという、
技術面だけでなく政治・文化・法制度・倫理観までも
含む極めて複合的なテーマです。
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ロードマップ①-⑧「国際的な協力と知識共有」について、更なる詳細な考察を示していきます。
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1. 国際宇宙機関・プロジェクトの協力体制
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NASA主導のArtemis計画と
「アルテミス協定(Artemis Accords)」
について現状の進展。
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2025年5月現在、アルテミス協定の署名国は55か国に達し、ノルウェーが最新の参加国となりました。
しかし、米国の政権交代により、NASAの予算削減やアルテミス計画の再評価が進められています。
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中国・ロシアの「国際月面研究ステーション(ILRS)」の現状についての現状。
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中国とロシアは、2035年までに月面に核動力発電所を建設する計画を進めており、2025年5月には共同で覚書に署名しました。
ILRSは、2036年までに月面基地の建設を完了し、国際的な科学研究を支援することを目的としています。
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食・文化面からの協調 について。
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宇宙飛行士の多様な文化的背景を尊重し、
食文化や宗教的制約に対応することが求められます。
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2. 月面基地構想と共用インフラの協調
協力が必要なインフラ領域
1.食料貯蔵モジュール:
ISO 31512:2024に基づく
冷蔵・冷凍保存の標準化が必要です。
2.物流効率の向上:
国際的な輸送規格の統一と、
月面での自律型搬送システムの開発が求められます。
3.長期保存基準の統一:
食品の保存期間や安全基準の国際的な整合が必要。
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3. 国際的な食文化・宗教・倫理への対応
宗教上の飲食制約
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①:宇宙飛行士の宗教的背景に応じて、
ハラールやコーシャの食事提供が求められる。
飲食サービスを提供する際、
宗教的背景による食事制限は尊重すべき重要事項です。
主な宗教と代表的なルールは下記の通りです。
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❶:イスラム教
・豚肉・豚由来製品の禁止
・ハラール屠殺(叫び声を上げないなどの儀式的屠殺)
・アルコール飲料の禁止 ハラール認証マーク(HALAL)を取得した食材
・調理器具を使用
❷:ユダヤ教
・コーシャ(Kosher)規定
⑴肉と乳製品を同時に不可
⑵羊・牛・ヤギの反すう動物のみ許可
⑶魚はひれ・うろこがあるもののみ
⑷甲殻類×/血液残存×
食器も「肉用」「乳製品用」に分け、調理器具の管理が厳密に必要
❸:ヒンドゥー教
・多くがベジタリアン(肉不使用)
・牛肉は神聖視のため厳禁
・一部はタマリンド等酸味食材制限あり 浄化
・アヒンサー(不殺生)の思想から野菜中心。
流派で細則異なる
❹仏教(大乗系)
・不殺生戒に基づくベジタリアンが基本
・五辛(ニンニク・ネギ・ニラ・ラッキョウ・アサツキ)の忌避(宗派・地域差大)
日本の禅宗系や中華仏教では五辛を避けるケース多い
❺ジャイナ教
・厳格ベジタリアン
・根菜(ジャガイモ・タマネギ等)も不可
・発酵食品や蜂蜜も避ける流派あり
飲食物は最小の生命も避けるため、
細かい管理と調理時の空気ろ過まで要求
❻セブンスデー・アドベンチスト教会
・主にベジタリアン・アルコール
・カフェイン飲料の禁止 健康増進の教義に基づき、
穀物/野菜/豆類中心の食事を推奨
❼シク教
・酒類の禁止
・一部はベジタリアン
グルドワラ(寺院)で供される「ランガル料理」は
完全ベジタリアン
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提供時の対応ポイント
1.メニュー表記
「ハラール対応」「コーシャ対応」「ベジタリアン対応」など、明記しておく。
2.調理機器の分離管理
宗教ごとに専用の調理器具・まな板・油・食器を用意。
3.仕入れ先の確認
認証機関(ハラール審査機関、コーシャ機関など)の証明書をチェック。
4. スタッフ教育
食材の取扱い・交差汚染防止・
儀式的ルール(例:屠殺方式)を理解させる。
5. 現地文化・慣習への配慮
宗派や地域によって細かい戒律に差異があるため、
お客様への事前確認を徹底。
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②:ベジタリアン / ヴィーガン対応も必須
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③:NASAは現在、ヴィーガンやグルテンフリーなどの特別な食事制限に対応していません。
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④:マルチ調味ユニットの設計
多様な調味料を提供するユニットを設計し、
個々の味覚や文化的嗜好に対応することが重要。
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⑤:文化的理解・翻訳的設計
多国籍の宇宙飛行士が共に調理・食事を行うためには、文化的背景を理解し、
共通の調理プロトコルを確立する必要があります。
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⑥:月面版“ユネスコの食文化外交”
宇宙における食文化の多様性を尊重し、
国際的な文化交流の場としての役割を果たすことが期待されます。
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4. 宇宙調理技術の国際共有と標準化
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①:ISO / IEC規格への拡張提案
宇宙食の保存、調理、輸送に関する国際標準を策定し、各国の宇宙機関が共有することが望まれます。
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②:国際宇宙調理コンソーシアムの設立
「International Consortium for Lunar Culinary Systems (ICLCS)」の設立により、
宇宙調理技術の研究開発と標準化を推進します。
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③:標準化・技術ライセンス共有
宇宙調理技術の特許やノウハウを共有し、国際的な協力体制を強化することが重要です。
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5. 知識共有の手段とプロトコル
現在の共有手段(IAC, COSPAR, ISECG, NTRS, ESA, JAXAなど)を統合したプラットフォームを構築し、リアルタイムでの情報共有を実現することが理想です。
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6. 地球外生命圏での倫理と共生意識
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①食材の持ち込みと現地生産における生態系侵害の議論
:月面での植物工場や微生物利用による食料生産は、現地の生態系への影響を考慮する必要があります。
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②微生物利用による食料再生技術と「バイオ倫理」
:微生物を利用した食料生産は、バイオセーフティやバイオセキュリティの観点から倫理的な検討が求められる。
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③「宇宙での食」を人類文明の一部と位置づける必要性
:宇宙における食文化の確立は、人類の宇宙進出における文化的側面として重要であり、国際的な協力と理解が不可欠です。
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以上の考察を踏まえ、ロードマップ①-⑧の実現には、
技術的な標準化だけでなく、
文化的・倫理的な側面での国際的な協力と理解が求められます。
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ということ事で今回はここまで。
次回は、再考して次の段階へ
進めて行きたいと思います。
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