N°83. [伊藤のヨタばなし] 宇宙調理に関して:宇宙調理理論  ロードマップ②-⑥-N°03ついて。

伊藤のヨタばなし

ロードマップを一つずつ。ser.
------------
「②-⑥殺菌・無菌化手法の確立」
------------
「e-beam(電子線)導入の遮蔽・運用規制対策」と
「HPP をISRU(在地資材利用)で現地構築するための
材料・技術・課題解決ストーリー」を、整理・提示します。
重要な主張には根拠(国際基準・最近の研究)を添えてあります。
---
長いので要点→技術的詳細→段階的ロードマップという順で示します。
-------
要点(結論サマリ)
-------
e-beam(電子線)導入の解決方針(要点)

1.:電子線加速器は10 MeV 以下で運用する(誘発放射能の発生低減)。これが国際的な実務上の上限。

2.:加速器はモジュール化して基地外縁(別棟)に設置、可能なら部分的に埋設して月レゴリスを遮蔽材として使う(レゴリスの数十〜数百cmの厚みで実効遮蔽)。

3.:放射線安全は運用手順(インターロック、遠隔運転、リアルタイム線量監視)と結合して対処する。国際基準(IAEA / Codex)に従う安全ケースを作成。
-------
HPP(高圧処理)をISRUで実現する方針(要点)

1.:HPP の「重さ・厚さ」問題は、“薄い気密ライナー(地上から輸送) + レゴリス外殻(現地造形で圧縮支持)” のハイブリッド設計で解く。外殻は硫黄バインダーや焼結で 3D プリント可能。

2.:ライナー(気密部)は地上で精密加工した金属(アルミ・チタン合金)をモジュール輸送し、月面で外殻に組み込み。ライナー接合・気密検査の自動化が鍵。

3.:実運用は段階的:地上試作 → 小径実機(低圧)→ ISRU 製外殻を使った耐圧拡張。
---------------------
以下、各項目を詳述します。
図表や式・概算が欲しければ続けて提示します
(遮蔽厚の概算、HPP ライナーの薄肉設計サンプル等)。
--------------
A. e-beam(電子線)導入:遮蔽と規制対応(詳細)
--------------
1) 基本制約と設計原理

エネルギー上限
:食品照射用途で国際慣行上「電子線は≤10 MeV、X線は≤5–7.5 MeV」が推奨される(誘起放射能を避けるため)。まずこのエネルギー帯で設計するのが最も簡単で国際的にも受け入れられやすい。

運用リスク
:電子線は金属などに当たるとブレムストラールング(X 線)を出すため、遮蔽計算は電子線→二次X線の両方を扱う必要がある。さらに高エネルギーでは光核反応・中性子生成が問題になるため、10 MeV以下運用は安全マージンを保つ。
-------
2) 月面特有の「遮蔽」アプローチ

(a)レゴリスを主役にする(被覆/埋設)
:レゴリスは資源として現地に豊富にあり、放射線遮蔽材として実用性が高い。研究では「120 g/cm² 程度の質量厚さ」で放射線被曝を大きく低減できるという示唆がある(これは地上規模での解析値で、密度に応じて厚さ換算する)。月レゴリスの密度を 1.5–2.0 g/cm³ と取ると、60–80 cm 程度のレゴリス厚が参照ラインになる(環境とリスク基準により設定)。したがってモジュールを部分的に掘り下げて埋設することで輸送遮蔽材を減らせる。
ーーー
(b)局所高Z層 + レゴリスハイブリッド
:ブレムストラールングは高Z物質で効率よく产生され、逆に高Zで吸収も早い。設計としては「薄い高Z(鉛/タングステン)または高密度合金の局所ライナー(数mm〜数cm)」を加え、その外側をレゴリスで厚く覆う形がコストと重量のトレードオフで有効。高Zは必要最小限のみ地上から持ち込み、残りはレゴリスで賄う。
ーーー
(c)配置戦略
:居住区から離す(別棟・基地外縁のモジュール)、投射中は人間立入り禁止エリアとする。さらに「投射方向の安全扇」を考え、X線漏洩の可能性がある方向に人がいない配置にする。
-------
3) 運用規制・安全管理(プロセス)
エネルギー選定(≤10 MeV)
:これ自体が誘起活性化を避ける国際的手段。

安全ケース(Safety Case)作成
:IAEA の指針・Codex の要件に合わせた運用手順書(最大許容線量、緊急停止、無人運転手順、検査頻度)。

ハード面
:物理インターロック、二重扉、遠隔監視、個人線量計、モジュール外の線量監視点。

ソフト面
:運転手順、資格要件(放射線安全管理者)、定期的な試験・シミュレーション、ログ管理(すべて記録)。

国際・法的
:食用照射は Codex/IAEA ルールが基準。月面での実施は国家(ミッション主催)→国際仲裁・合意の手続きを経る必要がある(Artemis 関連の協力枠組み等で取り扱うのが実務的)。
-------
4) 技術的最適化(推奨)

電子線加速器の仕様
:10 MeV、数 mA(バッチサイズに応じ調整)、シャットダウン時の冷却・散乱管理。e-beam は X 線より効率良く(1/10 程度の電力で同じ線量を与えられる場合がある)という点も設計上有利(電力負荷低減)。

プロダクトハンドリング
:製品搬入室→遮蔽庫(閉鎖)→照射→出荷室。搬送はロボットで遠隔化。

プロトコル
:初期は低線量・実証バッチ(食品種別ごと)で官能・残留・微生物評価を段階的に行う。
--------------
B. HPP(高圧処理)をISRUで現地構築する:材料・技術・課題解決ストーリー
-------
1) なぜ HPP は“重量問題”なのか(技術的背景)

HPP は数百 MPa(400–600 MPa)が標準で、容器は極めて高い内圧を受ける。地上向け商用 HPP 装置は非常に重い(装置・支持構造で数十トン)で、打ち上げでの輸送コストが高額。さらに高圧作動の安全管理と保守も負担。これが「地上輸送だけで導入するのが非現実的」とされる理由。
-------
2) ISRU ハイブリッド案(概念)

基本アイデア
:気密で薄肉の内部ライナー(高品質金属/ポリマー)を地上からモジュール輸送し、外部の圧縮支持殻(圧縮メンブレン)を月レゴリスで3D製造して補強する。外殻は圧力を受け持つ(圧縮応力)ため、レゴリス系の材料で十分機能させられる。

インナー(ライナー)
:地上で精密製造、材質例:Ti合金、ステンレス、高強度アルミ合金(気密・耐腐食)

外殻(支持体)
:硫黄レゴリスコンクリート、焼結レゴリス、融着レゴリスなど(3D プリントで構築)。
-------
3) 具体的に必要な在地材料と製造技術

材料
:月レゴリス(充填材)、硫黄または溶媒が不要の焼結手法用バインダー、(可能なら)微量の補強繊維(現地産出難しいため輸送)。

プロセス技術:
1. レゴリス採取・分級(粉末化)
2. バインダー混練(硫黄溶融混合 or 微波/レーザー焼結)
3. 3D 押出し(または積層)で外殻形成
4. インナーライナー据付(自動ロボットで結合・シール)
5. 気密検査・耐圧試験(インフレーションや圧力試験)

これらの技術は地上での硫黄コンクリート・レゴリス3Dプリントの研究が進んでいる(近年の研究事例が複数)。
-------
4) 技術課題と対応アイデア(詳細)

課題(a) 気密と継手の品質管理
問題
:レゴリス外殻は圧縮強度は期待できるが、気密性は低い。

対策
:内側ライナーを完全なガスバリアとして採用。ライナーの継手は地上で高品質溶接・フランジ加工して輸送、月面で機械的に結合。組立は遠隔/自動化ロボットで行う。漏洩検査(超音波・ヘリウムスニファ)を実装。
-------
課題(b) 熱サイクルと材質脆化
問題
:月の昼夜温度差は大きく、硫黄系は温度変動で劣化する可能性。

対策
:外殻を断熱(エアロゲル層やPCM)で保護、外殻材料に温度安定性の高い処方(耐熱合金粉末混合・繊維強化)を用いる。硫黄系は温度管理を前提にした設計とする(局所加熱でリモート補修可能)。
-------
課題(c) 製造設備の信頼性・自動化
問題
:3D造形・焼結プロセスは安定化が必要(現地環境での変動が大)。

対策
:地上で広範な模擬試験を行い、プロセスパラメータを確定。ロボット自律運用アルゴリズムを設計し、初期はエアレス室(ドーム)内で製造後に外へ展開する方法を検討。
-------
課題(d) 試験と検証
対応
:段階的検証(地上模擬→真空・熱ブリーフ試験→小規模月面試験)を必須とする。気密検査・非破壊検査(超音波・X線検査は難しいので超音波・レーザーでの歪み測定)を組み込む。
-------
5) 実行ロードマップ(ステップ)
1. 素材試験(地上):月模擬レゴリスで硫黄混合・焼結の圧縮試験、熱サイクル試験。
2. 試作ライナー+小外殻(地上テストベッド):ライナー接合・気密試験、短時間運転(低圧)で耐久評価。
3. ロボット自動組立シミュレーション:無人組立のアルゴリズムを実地検証。
4. 月面先行ミッション(パイロット):小径 HPP 実証ユニット(例 圧力 50–100 MPa)を ISRU 外殻で構築・評価 → 成功後スケールアップ(400–600 MPa)。
---------------------
C. 生鮮保存(収穫物)の可否:技術的結論(短く)

可能
:短期〜中期(数日〜数週間)は「冷蔵+MAP+表面殺菌(コールドプラズマ / UV)+エディブルコーティング(キトサン等)」で実用的に延命可能。

長期(数か月〜年)
:丸ごとの生鮮保存は非効率。加工(ピュレ化→PEF/殺菌→フリーズドライ)して粉末/パウチ化するのが現実解。
---------------------
参考(核となる出典/根拠)※論文に引用可能な形で

IAEA / Codex:食品照射に関する基準(電子線 ≤10 MeV の運用と食品照射上の注意点)。

e-beam 食品処理の総説(効率・動向)。

放射線遮蔽とレゴリスの研究(レゴリス厚みと効果)。

レゴリス/硫黄 concrete と 3D プリントの研究(ISRU 建設素材)。

HPP(高圧処理)と装置の技術的課題に関するレビュー。
---------------------
推薦アクション(短期的に論文・提案でやるべきこと)
1. e-beam 安全ケース(論文節)を作る:10 MeV 運用の理論的妥当性、遮蔽設計(レゴリス厚の計算例)、遠隔運用・インターロックのオペレーションフローを定式化する(上で示した出典を元に)。

2. HPP-ISRU 概念設計(論文節)を作る:ライナー仕様(材質・接合法)、外殻材料候補(硫黄コンクリート、焼結レゴリス)、段階的実証計画(試験の条件)を定める。

3. 短い実証試験計画:地上でのレゴリス外殻+薄肉ライナー小径ボンネット(低圧)を作り、気密・熱サイクル試験を行う。並行して e-beam(10 MeV)で包装済食品への微量照射テストと遮蔽計測。
---------------------
もしよければ次はどれを深掘りしましょうか?(どれも論文化に使えます)

1. e-beam 用の遮蔽厚・線量計算の具体モデル(例:10 MeV、取り扱う製品厚とシールド厚の具体数値・計算式) — 実数値で安全マージンを示します。

2. HPP-ISRU の具体構成図(内ライナー寸法の概算、外殻材料量の見積もり、製造ステップのフローチャート) — 材料量と概算重量を含む。

3. **収穫物の生鮮保存プロトコル(MAP+コーティング+プラズマ)**を実験計画書レベルで作る(温度/RH/保存時間/評価指標)。

---------
ということ事で今回はここまで。
------------
#公邸料理人 #在外公館料理人 #伊藤のヨタばなし
#宇宙調理 #宇宙食 #universe #JAXA
#NASA #航空宇宙学会 
#テクノロジー #technology
#料理 #食思弁進化 #aRim #アリム
#調理理論 #cuisine

コメント

タイトルとURLをコピーしました