
ロードマップを一つずつ。ser.
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「②-⑦ プロトタイプ製造と加速老化試験」
:上記素材・プロセスを用いたプロトタイプ食品を製造し、加速老化試験(温度・放射線ストレス)で保存期間や官能品質の変化を評価。」
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ロードマップ② 「食品の保存技術の確立:
– 長期保存可能で軽量・コンパクトな食品の開発や保存技術の研究を行う。」は、全体を通して
最終的に得られた知見をベースに「ISO規格」「Artemis協定」レベルの保存食品仕様を策定し、
量産および国際共同利用に向けた設計を確定できる様にするのを
一つのゴールとして進めていきたいと思います。
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「2. 食品の保存技術の確立:
– 長期保存可能で軽量・コンパクトな食品の開発や保存技術の研究を行う。」から
ロードマップ②-⑦として。
プロトタイプ製造と加速老化試験」
:上記素材・プロセスを用いたプロトタイプ食品を製造し、加速老化試験(温度・放射線ストレス)で保存期間や官能品質の変化を評価。」
について追求していきたいと思います。
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<補足回>
「単位の意味」
「なぜその線量レンジを段階的に試すのか」
「安全上の理由(=安全ケースが必要な理由)」の3つです。
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まず単位の説明:kGy(キログレイ)とは?
•**グレイ(Gy)**は「どれだけエネルギーが物質に吸収されたか」を表す単位で、1 Gy = 1 ジュール/kg(=1 kgの物質に1ジュールのエネルギーを与えた量)。
•**kGy(キログレイ)**はその1000倍:1 kGy = 1000 Gy。
•食品照射でよく使う範囲は 0.1〜10 kGy が一般的な目安です(用途により変わる)。
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e-beam(電子線)で「最大 10 MeV」と言うのは何を意味する?
•**MeV(メガ電子ボルト)**は「電子に与えるエネルギー」の単位です。
•電子線(e-beam)は高エネルギーの電子を出して食品に当てます。電子が物に当たるとエネルギーを渡して殺菌や変性を起こします。
•なぜ“10 MeV以下”がよく使われるか:
•あるエネルギー以上(だいたい10 MeV前後)になると、電子やそこで発生する高エネルギーのX線(=ブレムストラールング)が「核反応」を起こしやすくなり、試料や周囲の物質が**微量の放射能(誘導放射能)**を帯びる可能性が出てきます。
•10 MeV以下に抑えると、そのリスクが非常に小さくなり、施設運用や廃棄の面で扱いやすくなります。
つまり、**≤10 MeV は「現場で安全に運用しやすい上限」**というわけです。
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Codex / IAEA が示す食品照射の線量レンジ(なぜ 0.5–10 kGy 等なのか)
• 世界的な食品安全の組織(Codex AlimentariusやIAEA/FAO/WHOの共同勧告)が、用途に応じた線量範囲を整理しています(例:虫害対策、貯蔵安定化、殺菌、滅菌など)。
用途の例と線量の目安(ざっくり):
低線量(0.1–1 kGy):昆虫の不活化、保存性向上、低レベルの酸化ストレス評価。
中線量(1–5 kGy):多くの食中毒菌・腐敗菌の大幅低減、ある程度の「殺菌」効果。
高線量(5–10 kGy):より強い殺菌やスパイスなどの滅菌処理(用途による)。
それぞれのレンジは「効果」と「品質(栄養・風味)の損傷」のバランスで決まります。
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なぜまず 低線量(0.1–1 kGy) を試すのか?
目的:まずは食品が「放射線による酸化(風味の劣化や色変化)」にどの程度敏感かを調べる安全な入り口にするため。
理由の柱:
1. 品質リスクを最小に:低線量は栄養や風味の損傷が比較的小さく、まずは「どの程度の酸化ストレスが起きるか」を安全に評価できる。
2. 科学的評価の積み上げ:0.1→0.5→1 kGy と段階的に上げて、微生物減少率、過酸化物価(脂質酸化)、ビタミン残存、色(ΔE)、香気(GC分析)などを見ていく。
3. 安全・規制面の準備:低線量試験で問題がなければ、より高い線量での試験を申請しやすい。
要するに:まず「やさしく触れて反応を見る」段取りです。
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なぜ次に 1–5 kGy を段階実施するのか?
狙い:1–5 kGy は実務上「食品の殺菌・リスク低減で効果が期待できるレンジ」です。多くの腐敗菌・病原菌の大幅な減少が見込まれます。
なぜ段階的に実施するのか:
:ここからは食品品質(香り・味・栄養)が変わりやすく、かつ殺菌効果が強くなる領域です。段階的に試して、最小の必要線量(=品質を保てる最小の殺菌線量)を見つける必要があります。
例えば:0.5 kGy で酸化が少ないが菌が残る → 1 kGy で菌が減るが若干風味低下 → 2 kGy で菌は良好に抑えられるが風味問題が進む、という形で「最適値」を探ります。
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「高線量 (>5–10 kGy) はどうなるのか?」
:高線量は強い殺菌・滅菌力をもつ反面、
風味や色、ビタミンなどの栄養が大きく損なわれやすいため、
食用の良好な品質を保ちながら使うのは難しくなります。
また、規制や社会的受容(消費者の受け止め方)も考慮が必要です。
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なぜ「安全ケース(Safety case)」が必須なのか?(具体的に何が必要か)
食品にkGy領域(特に1 kGy以上)を使うときは施設と運用で重大な安全問題が発生する可能性があるため、きちんとした説明書(安全ケース)が必要です。中身は以下のような項目です:
1. 遮蔽設計:作業場と周辺を放射線から守るための壁やライナー設計(厚さ、材料)とその計算。
2. エネルギー選定(例:≤10 MeV):誘導放射能を避けるためのエネルギー上限の根拠。
3. 運用手順:遠隔運転、インターロック、照射中の人の立ち入り禁止、緊急停止法。
4. 放射線監視:個人線量計、施設モニタ、作業者の被ばく管理。
5. 廃棄物・洗浄管理:包装や試験廃棄物の扱い。
6. 規制・許認可:国の原子力規制や保健当局・食品当局の要件に従うこと。
7. 緊急時対応計画:万が一の漏洩や事故の対応手順。
8. 環境評価:周囲環境への影響評価。
理由:放射線は人と環境に影響するため、事前に「安全にできる」という証拠を作り、認めてもらう必要があるからです。
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試験の実施順(実務的なステップ)
1. 文献・先行例の確認(どの線量で何が起きるかの既知情報を集める)
2. 低線量テスト(0.1–1 kGy):風味・色・栄養の敏感度をチェック。微生物も測る。
3. 評価:低線量で問題なければ、次に1–5 kGyへ進む判断。
4. 段階的増量試験(1→3→5 kGyなど):生物と品質を同時に評価。
5. 安全ケース・施設許認可:1 kGy以上の試験や商用化を行う場合は施設レベルの安全ケースと規制対応が必要。
6. 総合評価:どの線量が「十分な殺菌効果」を持ちつつ「許容できる品質劣化」かを決定する。
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測るべき具体項目(低線量でも必須)
微生物数(TVC, 指標菌):殺菌効果
過酸化物価(PV)/TBARS:脂質の酸化(風味劣化の指標)
ビタミン(例:ビタミンC):栄養残存
色(ΔE):見た目の変化
香気成分(GC分析):風味の鍵になる分子の減少・変化
官能評価(味見):人が感じる品質(トレーニングパネル)
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まとめ(超短縮)
e-beam ≤10 MeV:誘導放射能のリスクが小さく、実務で扱いやすい上限。
kGyレンジ:
0.1–1 kGy
:まずは低線量で酸化ストレス/品質影響をみる(安全スタート)。
1–5 kGy
:多くの菌を減らすのに有効な実務レンジ。段階的に試す。
>5–10 kGy
:強い処理だが品質損傷や規制問題あり。
安全ケース必須:特に1 kGy以上、あるいは高エネルギー設備の使用では、遮蔽、被ばく管理、許認可などを事前に整備する必要がある。
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ということ事で今回はここまで。
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